haiku0152

 

その指の先に柚餅子を裂きにけり


秋の気配さえも怪しい気候なので遅刻をお許し下さいませ。

以前参った日本画家の作品にYouと題する作品がある。茜色の背景にこちらを指さす牛に乗った人が描いてある。成人二人分の画面だ。何処から見ても目が鑑賞者を捉えるように計算したそうだ。

牛が写実的且つもふもふだった。更に真面目に述べると、絵全体から圧迫感を覚え怖かった。対人恐怖症には刺激が強すぎたようだ。併し、どうも戦争の現実に触発されて創ったらしい。訴求性がなければ確かに骨抜きに成ったろう事を思うと、胸襟の内が複雑になった。

それなのに切り難い柚餅子をようやっと裂いたと続けたのは何故か。此れでも一応平和への希求が根柢にあるとしておきたい。流離人に一時の休息を提供しようと思い立ったのだ。半分こして語らって来し方行く末をゆるりと眺める夕べがあってもいいのかもしれない。誰かと心のオアシスを共有したい。そんな気持ちが湧いてきた。

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