haiku0342

 

鯊の竿短き二本のみ泳ぐ


夕方、満ちつつある河口にて四五尺程の竿を横に動かす。十秒程浅瀬に蚯蚓を泳がせると、弱い当たり、おどおどした調子の食い付き、或いは瞬時にかっぱらう者などがある。室鯊や痩せた鮬を払いつつ一際強い引きを寄せると真鯊だ。

漸く暦の上の秋を迎えようとする頃は水温が高くて姿が見えないらしい。熱水の内を群れを作って凌いでいると言う。一昔前迄は遍在していた為針を投げれば直ぐに掛かった。趣味人は盲鯊と渾名したそうな。今や対岸や中洲、上流も海つ方も釣客は微動だにしない。それでも名人の米飯一炊の〆は桶を満たす。不漁とは何だったのか。釣りは科学だと宣う。長年の記録と今年の忠実な調査の結果とか。恐れ入り谷の鬼子母神。

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心無い翁に忙しないと評されたようだが、見応えのある機能的な竿捌きだった。

[追記0809]秘伝の一端を書いたら拙かったかも知れない。とは言え古人の糟粕さえ読解できない者ばかりだから無用の心配だろう。蝦虎魚を鏖殺し終えたら寧ろ感嘆する。

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