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歯車は花形螺子にさへ成れぬ夜勤漸く終りて思ふ


社会の歯車になりたくないとちょくちょくぼやくが、機械を分解してみると一番多いのは留金だ。螺子、ボルト、ビス、釘や鎹等。歯車の軸を固定するのに一本は使うのだから此の類の金具が最多なのは必定。会社員の身の上は寧ろ忍耐を強いられるので不動の構成部品が譬えに相応しいかも。

冶金踊躍(ヤキンヨウヤク)は身に過ぎる望みを抱く事を表す荘子の言筌。干将莫邪のような名刀になりたいと熔けた金属が踊り跳ねるのを見たら、鍛冶師は屹度不祥の材料だと思うだろう。嵌り役が必ず存在するのだから外物に煩わされてはいけない。こう説教する気は無い。但し、憧れは本当に益があるのだろうか。業物は肉を斬れば錆び、骨を断てば毀れる。良識ある博物館でない限り死蔵されるかぞんざいに扱われ朽ちて行く。金箔は強かに叩きのめされ磔の後風化する運命。白金は地金になって宝石を支えるか悪趣味の脂(やに)漬け。希土類は幽閉され eternal electrocution。鯫生は折角なら名もなき機械工の工具になって様々な機械に触れてみたいと思う。加工、採掘されたり、酸化、析出したりする遥か前の状態、天体の内部でどろどろと蠢いているのが理想ではある。

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漸くの文語仮名遣いはやうやく。掛詞の為に打消の助動詞を連体形にしてあります。

マイルスさんの工具になりたい。なんか、陶淵明の賦にキモいのがあったような。「願在~而為~」の句が印象的な。

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